
前回のブログでは、DXとは情報テクノロジーの力を用いて「既存の仕組みを変革する」と述べつつ、OOHでDXを進める場合の例を幾つか挙げさせていただきました。しかしながら、いきなり既存の仕組みを「変革」するような企画や事業を思いつくのはとても難しいと思います。
そこでDXを語るのによく出てくるキーワードとして「デジタルディスラプター」というものがあります。 これは、デジタルの技術を用いることで、従来企業のビジネスモデルを破壊するようなスタートアップなどの新興企業勢力のことを指します。

彼らがどのように従来のビジネスを破壊しているのかを学ぶことで、逆に既存企業がどのようにDXを進めていけばよいのかの参考にすることができます。
デジタルディスラプターの戦略として3つの顧客価値というものがあります。以下詳しく説明します。
1つ目が「価格優位性」。
これは簡単に言うと価格を下げたりその他経済的な利益を提供することで競争力を高める戦略です。 例えば、音楽配信サービスががある程度の部分まで無料でサービスを提供することでユーザーを取り囲む。クラウドサービスが従量課金制でサービスを提供することで、あまり容量を使わない初心者の人はほぼ無料に、逆に大量のデータを扱う人からはきちんとお金を取るようにすることで、初期導入のハードルを下げる。また少し事例としては古いですが、価格比較サイトが様々なお店の様々な商品の価格を比較しやすくすることで、ユーザーは欲しい商品をより安く買える。逆にお店に対しては値下げ圧力をかけるようなビジネスモデルも価格優位性の戦略といえます。

2つ目は「体験価値」。
これは顧客にこれまでないような優れた体験を提供するサービスのことを指します。
例えばスマートスピーカーに呼びかけるだけで、自分の欲しい情報が手に入ったり、家電を操作出来たり。ファッション系ECサイトがスマホを使って自分のサイズを計測できるサービスを提供することで、お店に行かなくてもオーダーメイドの服が作れたり、最近街なかに増えている荷物受取りロッカーサービスを使うことで、自宅にいなくても好きなタイミング好きな場所で宅配便の荷物が受け取れたりなどが挙げられます。

3つ目は「プラットフォーム」です。
顧客にポジティブなネットワーク効果を提供することで競争力を高める戦略です。ネットワーク効果とは、コミュニティーだったりサービスを利用する人だったりが増えれば増えるほどサービスの質や量やスピードなどが向上する効果になります。
ソーシャルネットワーキングサービスであればユーザーが増えれば増えるほど、情報の発信者も増えることになるので、それによって手に入る情報の量が増えたり、リアルタイムに手に入ったりすることになります。皆さんの中にも使っている方が多いフリマサイトも、買い手と売り手が増えれば増えるほど、商品の選択肢が増えたり、より安く買えたりすることができます。またコロナ禍で爆発的に普及した出前サービスであれば、商品を運んでくれる人が増えれば触れるほど、自分の好きなグルメが手に入りやすくなるというようなことなどが例に挙げられます。

以上、既存ビジネスを変革するための参考として、デジタルディスラプターが提供する3つの顧客価値をご紹介しました。
そういう意味では、公共交通機関利用と電子決済に新しい顧客価値をもたらした「交通系ICカード」もまさに既存の鉄道ビジネスに新しい体験価値をもたらしたDXの例といえると思います。

以上、DXを考えるためのキーワード「デジタルディスラプター」について書いてみました。次回は、DX特有のプロジェクトの進め方について紹介したいと思います。