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OOHビジネスでDXを進めるには?

OOHビジネスでDXを進めるには?

 私はこれまで駅を中心とする公共空間の活用事業に長く携わってきました。その中でもOOH(=アウト・オブ・ホーム)と呼ばれる交通広告や屋外広告に関して、広告の企画から新規媒体の開発まで幅広く関わってきました。特に、OOH領域におけるデジタル化やデータ活用に関するプロジェクトにも度々携わってきたことから、最近ではOOHでDX進めるにはどうしたらよいか?のご相談をいただくケースが増えてきています。

 本ブログでは、自分なりに試行錯誤しながら進めてきたDXプロジェクトの推進の仕方について数回にわたり書いていこうと思います。この回では、DXの定義と、OOH(交通広告・屋外広告)の領域でDXを進める場合の例について触れてみます。

そもそもDXとは?

 もはや使い古されてきた感のある「DX」という言葉。TVCMでも、様々なビジネス系のメディアでも、会社内でも、もはやこの言葉を聞かない日はありません。

 この記事を読まれている皆さまの社内でも、まさに「うちの会社でもDXを進めなければ!」という声が上がっていてどうしようという方もいるかもしれません。具体的に何を目的に、どのようにDXを進めていけばよいのかわからないという方も多いのではないでしょうか?

 なんとなく「デジタルに関することをやる」「データを分析して活用する」「AIをつくる」みたいな理解をしている人もいるかと思います(私もその一人でした)。

 経済産業省の方では、DXの定義が以下のように定められています。

経済産業省の定義

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

引用元:DX推進ガイドライン(経済産業省)

 一文が長くてわかり辛い文章ですが、簡単に要約すると情報テクノロジーの力を用いて 既存産業の仕組みや構造を変革することとまとめることができます。 ここので重要なのは、デジタルツールやデータ活用はあくまでも手段であって、「既存の仕組みを変革する」という点がポイントです。

OOHでDX

 上記の定義に従えば、どのようなビジネス上の課題を持っており、何をするためにDXを進めたいかという最初の目的設定がとても大事です。次回以降でこの辺りの進め方について述べていきたいと思いますが、今回はOOHビジネスでDXを進めていくためのケーススタディとしていくつかの例を考えてみました。

例1)売れるサイネージの条件を知りたい!

→統計分析でデジタルサイネージの稼働率を予測する

 OOHメディアを販売している媒体社、或いは広告代理店にとって、「どのような媒体であれば広告主に買っていただけるのか?」は永遠の課題です。それを例えばデジタルサイネージメディアにフォーカスし、少しかみ砕いて「どのような条件が揃えばデジタルサイネージの稼働率が上がるのか?」という問いにした場合、統計分析の手法のひとつである「多変量解析」が有効です。

 ここでは細かな方法については割愛しますが、簡単に言うと稼働率を算出するための方程式を様々な条件(変数)を組合わせて説明できるようにする手法です。例えば、気温が高くなるほどビールが売れるという相関関係を導き出すといったことです。

 今回の例で言えば、全国に設置されているデジタルサイネージの稼働率やスペックを調べて、高稼働率となるデジタルサイネージの条件を導き出すことができます。稼働率と相関性の高い要素を調べ、最も稼働率が高くなる可能性のある変数を組合わせて予測式化します。
わかりやすい例で言うと、ホーム階にあるサイネージよりも改札階にあるものの方が稼働率が高い傾向にある。1か所に1面しかないものよりも、複数面あるものの方が稼働率が高いといった傾向等が見えてきそうです。稼働率を最大化するには、CPMをいくらくらいに設定するとよいかといった最適値も見えてくるでしょう。
 これによって、新しく媒体開発をする際のデジタルサイネージのスペックの決定や値付けなどに活用することができます。

例2)OOH広告接触者に対する接触頻度を増やしたい!

→位置情報広告を使ってOOH接触者をリターゲティングする

 Withコロナでこれまで当たり前だった週5日間電車に乗って会社へ通勤するという習慣が当たり前ではなくなってきている中、交通広告のみではこれまでのようなフリークエンシーを確保するのが難しくなってきています。そのため、他の手段を用いていかに繰り返し接触を実現するかという課題をよく耳にします。

 この時、スマホアプリのGPS等を経由で取得される位置情報データを用いることで、ある場所を利用していた人に対してマーケティングをすることが可能になります。OOH広告の掲出されているエリアを利用した人に対して、リターゲティング広告を配信を行ない、さらにOOHと位置情報広告を組合わせた際に、サイトアクセスや店舗への送客がどのくらい向上するのかを可視化することもできます。また広告を配信したユーザーに対して、追っかけでアンケートを行なうことも可能です。このような効果測定によって、結果的にブランドへの好感度が高まったか?結果的にどのような行動変容に繋がったか?といったことも知ることができます。

 新たなデータを組合わせることによって、OOH単体では成しえなかった課題を解決することができるようになります。

例3)OOHメディアのアカウンタビリティを向上させたい!

→リアルタイムな広告接触者数を可視化する

 OOHメディアの媒体価値を数値化しようとした場合、コロナ前までは駅や電車の利用人数に媒体ごとの視認率を掛けて広告接触者数の推計値を出すというのが一般的でした。しかし、私たちはコロナ禍を経験して、様々な外的要因やライフスタイルの変化によって常に一定のボリュームの生活者にリーチできるという保証はなくなりました。クライアントからは、その時々の広告接触人数を求められるようになり、年1回の利用者調査ベースで算出していた推計値では媒体価値を説明することが難しくなりました。

 そこで、その時その場の滞在人数を計測する手法として位置情報データの活用が注目されています。例えば、リアルタイムに取得可能な位置情報データと、従来から各社で使用している媒体評価データを組合わせることで、「時期」や「媒体」を指定して、広告接触者の人数を算出するBIダッシュボードのような環境を作ることができます。これによって従来よりも正確な値で広告接触者のレポートを作成することができ、OOHメディアのアカウンタビリティの向上に寄与することができます。

 以上、OOHビジネスでのDXプロジェクトの例を幾つか上げてみましたが、やはり一番大事なのはデジタル技術やデータを使うことではなく「どんな課題を解決したいのか?」もう少し簡単に言うと、「何に困っているのか?」という課題設定の部分です。

 次回以降では、DXプロジェクトの進め方について何回かに分けて述べていきたいと思います。

この記事を書いた人:

アカウントプランナー
広告代理店にて、OOHを中心とした企画営業、新規事業部門のリーダー、文化事業部門の事務局次長を経験後、2020年6月jeki Data-Driven Labへ入社。空間や移動の持つ可能性に関心があり、リアルとデジタルを掛け合わせた新しい事業の創出に携わっていきたい。マーケティング専門誌「販促会議」にてOOHのコラムを毎月連載中。趣味は、マラソンやアートスポット巡り、3Dコンテンツ制作など。